八木英里奈さん
- 空間全体を見渡し、観察や調和に全身を開く
5泊6日間、大変お世話になりました。
日常に戻り、情報の膨大さに戸惑っています。
感覚が閉じていく一抹の寂しさと共に、テンプルステイで過ごした時間の輝きを思い出します。
お寺での食事はどれもおいしかったですが、ここに戻ってみると食事は味の濃さに驚き、舌のしびれがずっと残る感じがします。市販のグリーンカレーを食べてお腹を壊し、ただ寝る時間もありました。戻ってからもお寺と同じように早起きして動けるかと思いきや、そうはいきませんでした。解散後の茶話会で「できない自分を責めないで下さいね」とのお言葉をいただいて本当に良かったです。美味しいご飯をありがとうございました。テンプルステイ最初の作務で雑巾掛けをした翌日、全身が強烈な筋肉痛になりました。小食の際、静かで集中を求められる環境の中、全身の痛みと、それをマスキングするものが無いことへの混乱と、体に目を向けたことの驚きで涙が出たことをよく覚えています。こんなに自分の体の痛みに意識を向けざるを得ない状況は、今までなかったです。自分の体が痛いことなども、今までは色々な刺激で誤魔化していたのだと思います。
日常に戻り、体力がついたように思います。初動がバシッと動ける感覚があり、この体力を維持したいです。関東へ戻る道中、転勤中のパートナーと食事した際には、食べ方がワンちゃんみたいだったのに人間になったねと衝撃的なお言葉を頂戴しました。
テンプルステイで過ごした6日間での生活で、今取り入れていること、生かしたいことをお話します。
・朝の読経…読経しているうちにシャキッとして、1日のメリハリがつきます。また、自然と仏法を軸に生きようと思えます。声を出すのも良い感じがします。
・食事…一人の時は五観の偈をお唱えして、できる限り静かにいただいています。テンプルステイほどの静寂した環境ではありませんが、それでも体や音やいただいている食べ物の感覚に意識を向けていたいです。また、慈光に載っているメニューにも挑戦してみたいです。
・作務…どんなに忙しくてもトイレ掃除はしたいです。せっかくつけた体力と神経を落とさないようにと思って、できるかぎり掃除の時間を設けています。また、駅では階段を使うようにしています。スケジュールも整理して、ゴミ拾いに行く日が作れたらいいなと思いました。
・片付け…帰宅して無駄な物の多さに驚きました。漫然と所有していて、しかも大切にしていないことが多く、さらに物の置き場所も定まっていない状態です。私のつけてきた癖の強さそのものと思います。お寺のように物を大切にして、整理整頓したいと思いました。一事が万事が混乱状態なので時間はかかりそうですが、行動6箇条のやればできるを思い出して取り組みたいと思います。
テンプルステイで過ごして感じたことは、毎日・その都度取り組むことの大切さです。和親の際に、人は忘れるものだというお話をいただきました。毎日磨いているはずなのに汚れたり、覚えたはずなのに忘れたり、すぐに心がそぞろになったりします。その度に掃除したり、唱えたり、はっとしたりしないと、あっという間に乱れてしまうのだと思います。
心もそうで、調子の良い時は「生きとし生けるものが幸せでありますように」と言えたりしますが、すぐに人を裁いたり、好き嫌いを言ったり、怒りを覚えたりするので、何度もはっとしていたいなと思います。また、今まで集中しろと言われると、無意識に対象を凝視してしまう癖がありました。けれどテンプルステイで良い集中を得たと思います。空間全体を見渡したり、観察や調和に全身を開く感覚と言うと近いかもしれません。テンプルステイ中に大小さまざまな失敗をしましたが、自分の癖を知るきっかけとなり、今まで社会に出て怒られてきたことやうまくいかなかったのは、自分のこういう部分だったのかなと思いました。
物の扱いに対しても、学びました。置く、畳む、色々な動作に集中していなかったと思いますし、この程度でいいやという気持ちもありました。
「自分がされたら嫌でしょ」「どんって置いたら痛いです」そんな言葉を聞くうちに、物も大切にしたいと思いました。
面倒くさいからこの辺りでいいやと思うことに対しては、スピーディーに動けばできるという発想で対処できることがわかりました。それでも面倒臭いが出てこないと言えば嘘なので、日々葛藤していきたいと思います。最初は無事に終えられるか不安でしたが、お弟子さん方はじめ、福厳寺の皆様、そして参加者さまお一人お一人の支えによって乗り越えられ、素晴らしい体験となりました。
最終日にえいこう様から「ここは皆さんのホームです」と言っていただけた時には涙が止まりませんでした。何よりお顔立ちの柔和さに自然と涙が出てしまうのです。こんなお顔になりたいなあと思いました。お弟子さん方がお話してくださっていたこと、参加者の皆様と会話したこと、振り返るほどに温かく感じます。今頃どんな風に過ごされているのかなと思います。土曜日にはご縁日がありました。参禅者の皆様と一緒に法話を聞き、サービス業も布施であることや、経営は仏法の縦糸に創意工夫の横糸を編み布を作るというお話を聞きました。私もそんな風に仕事がしたいと思いました。私は写真で個人事業をしています。今のお仕事は順調で困っていることはありませんが、少し迷いのようなものも出てきました。仏法を軸に働きたいなあと思い続け、与えられたお仕事に感謝しつつ、これからも求道していきたいと思います。
また何度でも立ち返りに参りたいと思います。
福厳寺の皆様、大愚和尚、お弟子さんの皆様、ご参加の皆様、ありがとうございました。合掌