千洋 江水さん

- 「お寺が自分の中に根を下ろしたことを確認し、自分の課題をさらに絞り込んだ」ということになろうかと思います。
前回は初めての参禅で、完走すること自体が自分にとっての課題であったため、終了時には感極まって涙が出ました。お寺でおこなうことひとつひとつがチャレンジであり発見でした。もとの生活環境に戻ってからも参禅中の生活習慣や気づきを維持できるかどうかが不安で、お寺を離れがたい気持ちがあり、駅や電車では周囲の光景が参禅前とは違って見えました。
今回の終了時にはそうした気持ちがほとんどありませんでした。お寺を離れるのは名残惜しかったですが、世界が違って見えるようなこともなく、生活習慣が一変するようなこともなく、何をしに行ったのか、何を学んだのか、自分でも不思議で、自分は慣れ切ってしまったのだろうかと思いました。心がとても穏やかで集中している感覚はありますが、参禅中の自分と娑婆に戻ってからの自分は何も違ったりせず、お寺と段差のない地続きの生活を現在も過ごしているような気がしています。
肉体的な面でも、前回の帰宅後数日は下半身のむくみがひどかったですが、今回はさほどではありません。自分なりに考えてみるに、前回のステイ終了から、お寺での習慣が薄れないように、読経や礼拝(五体投地)、食事の作法、掃除、あいさつなどできる限り継続を心がけていたのが、約半年かけて身について、完璧ではないにせよ自分のものになっていたのかもしれません。
テンプルステイと前後して佛心僧学院で学び、その後は大愚道場やFMTセラピスト養成学院、経営マンダラ、和尚様の動画、あきば大祭など、佛心宗の活動で参加できるものはほとんど参加して学んできたことが、ここにきて自分の中に浸透してきたのだろうかと思います。また、できるだけお寺に伺って草抜きなどをさせていただいたことで、それまでは「特別なときに訪れる家」であったお寺が、「いつも帰る場所」へと深まっていたのも大きかったと思います。
ほかの参禅者の方と調和・協調することについても、前回はどこか力みがありましたが、今回は比較的自然な感覚でおこなうことができていた気がします。
はじめは対人関係でストレスを感じることがありましたが、相手と自分に何が起こっているかを観察した上で、自分の心持ちや接し方を変えることで、ストレスをやりすごすことが少しできるようになりました。相手にとって必要な手を差し出すことと、相手のご修行の機会を奪わないことの両方を意識して過ごしていました。「お蔭様」の考えが根づいていると言っていただき、若い頃はそういう人間ではなかったので、どうしてこうなったのか、自分でも意外で不思議でした。
病気をして様々な方に助けていただいたことがとても大きかったと思いますが、前回のテンプルステイの際はまだ意識して「お蔭様」に気づこうとしているところもありました。私の親は感謝や地道ということを重視する人で、祖母もご先祖供養を大切にし、法事が多い家でしたが、私自身がその精神をきちんと受け継いで成長したかというとそうではありません。
ここに来るまでにはやはり和尚様や内弟子の方々がご恩や縁起ということを辛抱強く何度も説いてくださったり、慈縁の会やお祭りの奉賛などお寺の活動で助け合いの実践機会を持てたりしたことが大きかったと思います。佛心会に入って受戒すると決めたのは、自分の力で何とかなると思っていたのが大きく失敗し、自分は愚かな人間で、自分一人の力では巧みに生きられないのだ、自分には導いてくださる正師と善友が必要なのだと思い知ったことがきっかけでした。それ以後は本当に多くのお導きをいただいて、まだまだ未熟ではあれ、ここまで学びを深めることができました。ですから今の自分のあり方は和尚様はじめお寺のみなさま、善友のみなさまが作ってくださったものと言えますし、私自身はそのことをとても嬉しく、有難く思っています。
2024年に受戒して以降、特に前回のテンプルステイ参禅以降は、自分でも少し心配になるくらい福厳寺漬けでしたが、こうして振り返ってみると、半端にせずしっかり漬かって良かったなあと思います。しかし課題もあり、今回の目標の一つであった「素早く行動し、時間を守る」ということは、やはりまだまだでした。改めてきちんとご指摘いただいたことをとても感謝しております。
オリエンテーションで拝見した和尚様の動画で、「良い生活習慣」と「新しい自分の発見」というお話があり、最終日までにそれが実現できたらいいなと思っていました。
自分にとって前回の参禅が「お寺とは何なのかを理解し、自分の現状と課題を知った」ことであるなら、今回は、「お寺が自分の中に根を下ろしたことを確認し、自分の課題をさらに絞り込んだ」ということになろうかと思います。「我を張らない」「自己都合を出さない」を引き続きのテーマに、今後も精進を重ねて参ります。ご縁日の準備をした際に、中心点をそろえたり、テントの位置や色をそろえたりといった、細やかで甘えを許さない妥協しない姿勢が、清新で居心地の良いお寺の雰囲気を作っていることを知りました。私自身も我や慢に流されず、人に安心を与えられるような清々しい人間になれるよう、努めていきたいです。そして、もし受け入れていただけるのであれば、またいつかテンプルステイに参加して、その時々の自分の変化や姿勢を確認したいと思います。
前回のような激しい感動や発見はありませんでしたが、今回は今回にしかない、お寺と自分に対する深い気づきや振り返り、ご縁をいただくことができました。このようなきっかけをくださった大愚和尚様、内弟子のみなさま、お寺のみなさまに、心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。