参禅者の声

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H.Hさん

普段どれだけ自分の声、自分の身体の力、自分の記憶力を活用していなかったかに気づくことができました。

テンプルステイに申し込んだのは、自分の言葉や力を信じられない、自分の何が人の役に立てるのかわからない、お金を稼いで生活を豊かにしていくことに喜びを感じられなくなった、、、
という慢性的なモヤモヤをなんとかしたかったからです。今年10月、8年勤めた会社を退職することを決心したあと、転職先さえも決めずに迷わず「テンプルステイ」に申し込みました。

5泊6日の修行の中で、普段どれだけ自分の声、自分の身体の力、自分の記憶力を活用していなかったかに気づくことができました。
頭ばかり使い、スマートフォンに記憶を頼り、自分が持てる身体の機能をほとんど使いこなすことなく過ごしていたんだ、と。
初めは大きな声を出すことさえ恥ずかしく、どれだけ意識しても出し惜しんでしまう自分がいました。
また、修行中はネット検索ができないので、知らないことや分からないことがあっても調べられません。しかし、時間が経ち、周りを観たり、同じ日課を繰り返す中で答えが浮かんできたり、自然と見えてくるものもあり、そういう発見がとても面白いと感じました。
「私語を慎む」という決まり事もまた、自分のために良いことだと感じました(完全には守れませんでしたが)。余計なことを訊かない、余計なことを発しないことで、自分の心に生まれる気持ちを見逃さず、内面に向き合うことができたように感じました。反対に、互いに協力し合う場面では、お経を朝から唱えていたおかげで、声の通りがよく、相手に伝わりやすく、コミュニケーションが円滑になっていったように感じました。
修行中の決まり事は、不便に感じたり、なんで?と疑問が生まれることもありますが、まずは素直にやってみることで、意外といいなと発見できることもたくさんありました。規範から逸れぬよう、僧侶の皆様が真摯にご指摘くださることは、本当に有難いことでした。

毎朝毎晩、仲間と共に唱えるお経も、だんだんと一体化し、生き物のように育っていったのも嬉しかったです。自分の内面の探究だけでなく、協力しなければ成し遂げられない場面も多くあり、「1人ではできないけれど、仲間と一緒だから達成できた」という実感を持てたのも素晴らしい経験になりました。

気づきや学びが本当に多い毎日でしたが、今後、特に心に留めておきたいことは、お経の中にある「功の多少を計り彼の来処を量る」という言葉です。目の前の食べ物、服、建物、設備、身の回りのモノはどれだけの人の働きで、どのようにここへ来たのかを想像し、感謝することを忘れない人でありたいです。また、人と関わる中で優越感や劣等感を抱いてしまった時は、自分の内面に意識を戻し、自分の行いに集中することを習慣化できるようになりたいです。