参禅者の声

  1. HOME
  2. 参禅者の声
  3. K.Aさん

K.Aさん

なんだかんだ見ないように生きてきた最も取り組むべき課題たち。

まず始めに、テンプルステイという企画を提供してくださったこと、そして勇気を出して参加できたことを心から嬉しく思っています。本当に想像を超える沢山の気づきを頂きました。
 
何もかもが過多な日常においていつの間にか複雑な形に溜め込んでいた様々な思い込み。それが簡潔で適度なプレッシャーを伴う禅的共同生活の中で次から次へと眼前に現れました。
なんだかんだ見ないように生きてきた最も取り組むべき課題たち。
静寂な夜闇や美しい朝焼け、木々の香り、ヤギの鳴き声や太陽幼稚園から聞こえる上手い下手のない無垢な歌声に包まれて、素直に受け止めることができました。

例えば急ぐ事。
これまでの私はなにごともゆっくり行うことで丁寧にじっくり味わう事ができ、少なくても一つ一つありがたみが感じられて良いという考えで生きていました。
ところが、テンプルステイで普段のニ倍速であたふたと動いている間、私は気付けば常に<中今>にいたのです。その時やっている行為以外のことを考える暇も余裕もない、空っぽのただの私が常に在っただけでした。
そしてそれは素晴らしい充実感でした。
急ぐ事で時間が増えたようにも感じ、増えた時間が心にゆとりを与え、今までより少しだけ細やかな気遣いも自然に生まれました。
長年ヴェールで隠していた怠惰の上を、共に急ぐ仲間たちが走り抜けて行きました。

読経からも深い学びを得ました。
書かれている内容は勿論のことですが、その場の人々の声をすべて聴きながら自分の声を重ね、共鳴しながら体内と場の空間を全身で感じ振動を一つの渦にしていく取り組み。この行為が自分には大変感慨深く、まさに現世で生き抜く上で自身に与えられている短所(陰)と長所(陽)が同時に湧き上がってくる強烈な体感を得、内弟子の方々には「緩ませる事が大切」とお言葉をいただきましたが毎回汗だくでした。

今回自身を合わせて七名の参加者でしたが、五泊六日という短期間の中で驚くほどお互いの凹凸を垣間見、鏡となり、それが一瞬前の、そして一瞬先の自身の姿となり、それゆえか慰めと励まし、労りとなって同志というかけがえの無い繋がりを得ることもできました。

そして日々常に純粋に修行に取り組むことで培われた佇まいを肌で感じさせてくださる三人の内弟子の方々が、色々手解きや心配りをくださりお一人ずつ道場として存在していらっしゃった事で、自我とは何かが癖のように頭に浮かぶ毎度の逃げ口上は間伐なく打ち砕かれ、なんとか迎えた最終日は、この日々が終わってしまうという残念な想いと同時に今後にどう繋げていこうかという晴れ晴れと意欲に満ちたとても素晴らしい心持ちでした。

長くなってしまいましたが、今後はまず早起きと読経、掃除、お食事での作法、運動を生活状況で可能な形を見つけずっと続けていきます。
特にお掃除は身に付けた速いリズムを忘れない事が肝心だと思っています。
この四つを続けることで全ての滞りが解け自然な流れになっていくと感じています。
後は自我をいつも見ていること、必要のない主張を捨て、葉の一枚であり、それは樹全体であり、山全体であり、すべてであることを常に肝に銘じて生きていこうと思っています。

穏やかな決意を待って、授戒会に申し込むつもりです。

本当に何もかもありがとうございました。