A.H さん
- 私は充分に「足りていた」
5泊6日の今回のテンプルステイへの参加目的はリセットでした。
この5年間、往復約3時間を満員電車での通勤に費やし、決まった昼休憩がなく食事は不規則、自由診療ではありますが医療従事者として接客や施術に神経を遣い、人間関係でも多少の気を遣うと1日を終えるときには自分と向き合うエネルギー残量がないのに睡眠導入剤がないと眠れないという状態でした。
プライベートでは大切に想っていた30年来の友人、婚約者と別れ、直近では私にとって最も大切な存在である5匹の猫のうち、最愛のパートナーであった最初の猫を病気で亡くしました。
恋人の優しさや気遣いも負担に感じてしまうくらい、大きく重くなった心の苦しみや身体の疲れを抱えながら、それでも何事もない顔をして繰り返す毎日をこれまでのようにやり過ごす事ができなくなっていました。
そんな自分にご褒美として必要以上の物を買い、クローゼットや戸棚の中は使用しない洋服や物でパンパンでした。
こんな毎日を見つめ直したい、その一心でした。お寺のスケジュールはかなりタイトで常に駆け足、日中に横になる間はありませんでした。
そんな中、内弟子の皆さんを観察していると身のこなしが丁寧で無駄がなく、美しいと感じました。そして、私に時間がないのは身のこなしや物事への取り組み方が下手なのだと気づきました。
また、作務の一つとして山に入り棘のある草を刈りました。
実は1番したくない作業ではありましたが、少しずつ刈っているうちに自分の心の棘が取れていく感覚になり、その内に草の根をよく観察し、どの方向から身体を入れるとダメージが最小限で沢山刈り取る方法を自ら考えて習得できるまでになりました。
どんな問題にも根があり、様々な角度から観察し、時に全体を見渡して自分の取り組みを客観視することの大切さを身をもって学ぶことができました。夜には坐禅を組み、意識の変化として実感したことは、私は充分に「足りていた」ということです。
6日間という長いお休みを取ることができ、行ってらっしゃい!と快く送り出してくれた職場環境、好きな仕事をしていること、実家や自分が帰る家があること、守るべき愛猫たちや優しい恋人の存在など、在るものを一つ一つ見つめると日常がとても有り難く、とても愛おしくなりました。
同時に.時間がない、エネルギーがない、自分をすり減らしているという感覚も全て自らが作り出していた問題だったということに気づきました。身体面では自分の呼吸がとても浅いことを実感しました。
読経時は息苦しく、大きな声も出すことができなかったです。
以前から何かと息を止めてしまう癖、歯がひび割れる程の奥歯の噛み締めがあり、これは意識をして改善に取り組みたいです。
また、この息苦しさや身体の緊張、強張りが行動を億劫に感じさせていたことにも気がつきました。学んだ身体のリセット法を続けていきたいと思います。テンプルステイを終え、翌日からすぐに仕事でした。日課として早起きをして掃除をすること、きちんと食事を摂る、事前準備をしっかりする、作業は一つ一つ行うなどすぐに変えられることから取り入れて過ごしています。
実はテンプルステイ中も睡眠導入剤を服用していましたが、帰宅してから自分の日常を精一杯過ごすことで自然と眠くなり、服用頻度が減りました。これからも薬との上手な付き合い方ができるようになれればと思っています。
今後は膨れ上がったクローゼットや携帯の画面の整理など、蓋をしていたことから計画的に取り組みます。最後に、
私は理由はわからないけれど、たまにお寺に立ち寄ってボーっと過ごすことがありました。
内弟子さんや善友の皆様と共に一所懸命作務をしたことで、お寺の空間にある安心感や居心地の良さの正体は、丁寧にお手入れをされている人の存在であり、大切に守り続けてきた人たちの想いなのだと自分なりの理解をしました。素晴らしい機会を与えてくださったお寺の皆様、善友の皆様、ありがとうございました。