山下 志保さん
- テンプルステイはまさに「究極の日常」
意識や体の変化と気づき
〈意識編〉
①開始直後に「声が小さい!」と大喝され、テンプルステイは厳しい場所であると覚悟して臨んだつもりでしたが、それでもまだ自分に都合よく認識していたことに気づき、ここがどのような場所なのか、その片鱗を掴めたように感じました。
②自分の日常にはない時間割り、活動・食事・他への気遣いという点での質の深さと量の多さ、ただ只管に隅々まで心を配り続け、どんな瞬間も報恩感謝する生活。最初は体も心も慣れませんでしたが、それも2日ほど。3日を過ぎる頃には、それらを自然と飲み込んでいる自分に気づき、「次は更にこうしよう」という先への思いが生まれていました。
「郷にいれば郷に従え」という考えは元々大切にしていましたが、それはあくまで表面的なことに過ぎないのだと気づきました。どんなことも、納得し腹に落ちるまで経験すれば、「従う」という小さな世界を悠々と超えて、自らの体は自然と動き、向上したいという思いが生まれ、心地よく、そして上手く循環するということがわかりました。
③僧侶の風貌をイメージし、この1週間、毎日欠かさないお化粧も一切せず、髪の毛も整える程度、服の色も極力抑えて臨んでみたところ、とてもすっきりとした、子どもに戻ったような素直な気持ちで暮らすことができました。と同時に、外へ意識を向けることに必死になり、内側に意識を向けていなかった自分に気づきました。
内弟子の皆さんが、忙しい中でも作務から戻れば、必ず身なりを整えてからお食事をしたり、音を立てずに綺麗な所作でお食事をされたり、儀式となればわずかな時間できちんと袈裟を身につけたり、いつ何時も姿勢を正してお過ごしになるお姿は、大変麗しいと感じました。内側に意識を向けた結果の姿こそ、真の美しさであること、洗面や入浴の本来の意味を改めて知ることとなりました。
④私たちの出会いは、一つも無駄がなく、意味があるということに改めて気づきました。大愚和尚様のおっしゃる通り、一人では成し遂げられないことも、仲間と協力する心があれば、成し遂げられる。それには、自らが人の懐に飛び込んで、また人を受け入れていく心の柔らかさが必要であると痛感しました。他人があって、初めて「自分」という輪郭が見えてくるということがよくわかりました。
⑤「物」とつくものへの「意識」の低さに気付かされました。食物、植物、動物、物の具(道具)すべてのものには命があり、特性があり、生かすも殺すも私という人間にかかっているということを知りました。
例えば、それらが汚物となったとしても、然るべきところに捨てるなど、最後まで人間の手によって大切に扱い続けなければいけない。また美味しいお食事をいただけたことや、作務の時に適切な道具を使うなど、いかにそれぞれの物へ「意識」を向けるかによって、結果は大きく変化することも知りました。
〈体編〉
①ふくらはぎから足首にかけて、小さなブツブツができました。かゆみはありませんが、今までできたことがないものです。食事が変わり、大量の汗をかいたからかもしれませんし、好転反応かもしれません。
②予定していたより、1週間近く月経が早まり、最終日の朝作務前から始まりました。他の女性メンバーの方もお一人同じような方をおっしゃる方が見えました。これも生活が変わった証拠かもしれません。今までになかったことなので、大変驚きました。
③トレーニングに行った日に、知哲さんから「体が緩まったので、明日は少し体が重くなるかもしれませんね」とお話をいただいたのですが、まさにその通りでした。翌日朝、感じたことのない重さを感じました。でも、今はとても体が軽く感じて快適です。
今後の生活への生かし方
①斜めのない生活です。家に戻って一番始めに驚いたことがありました。今までより断然動き続ける自分がいましたのです。とにかく座る機会が減っていることに大変驚きました。(体が軽く感じます)体を斜めに預けてだらけることがなく、体を垂直にして動いているか、真横にして眠っているかどちらかになっていました。これは今後も意識して続けたいと思います。
②食事の改善です。本当に食事の美味しさに大変感動しました。お肉やお魚を使わなくても、あれほどまでに満足できるお料理ができるのだと教えていただきました。精進料理をベースに、工夫次第でいかようにもなる。子どもと主人のために、楽しんで、健康的なお食事を提供していきたいと思います。
③自分の内側に「意識」を向けます。真の心の強さ・美しさ・健康を得るために、毎日少しの時間でも瞑想の時間を持ち、「気づき」にスポットを当てて暮らしていきます。
きっとさまざまな変化が現れると思います。最後に
このような機会を頂戴できましたこと、心から感謝しております。
今まで大愚和尚様のお話を耳で聞き、心と体で感じてきたつもりでしたが、テンプルステイを経験し、教えが体に染み渡る感覚を覚えました。
とはいえ、人間のため、またその感覚も薄れてしまうかもしれませんが、サンガとともに暮らしたこの1週間を宝として心に収め、これからも大愚和尚様のお話を聞くたびにこの感覚を思いだし、わずかでも向上しながら暮らしていきたいと思います。福厳寺の皆様、ナーランダ出版の皆様、共に暮らしていただいた皆様、家族に心より感謝致します。
またいつか、自分がどうしようもなく下がり始めたと感じた時には、お世話になりたいと思います。その日まで修行を続けてみます。
テンプルステイはまさに「究極の日常」、ぜひお釈迦様の教えを心の拠り所とする方には、一度経験していただきたいと思います。
長くなりまして、申し訳ありません。
誠にありがとうございました。山下 志保